
九州で酪農を営むには、“暑い!”というハンディキャップを乗り越えることが経営成績を決定付けるといっても過言ではないと思います。
今回は原稿を3回に分けて、農場でできる対策のポイントを簡単に解説します。
夏~秋口にかけて次のような問題がみられる農場では、暑熱対策が十分でないことが考えられるため、改善することで大きく収益を改善することが可能です。
暑熱対策として酪農場で出来ることは大きく次の2つがあります。一つは、牛舎の環境改善、そしてもう一つは給与メニューの内容を見直すことです。今回は、まず環境整備のうち「遮光と断熱」について、2回目は「換気と送風」、そして3回目は「夏場の飼料設計」について述べたいと思います。
「遮光と断熱」・「換気」・「送風」が暑熱対策のポイントです。それぞれの考え方について簡単に述べたいと思います。
皆さんは、特に暑熱対策を施していない古い牛舎でも、瓦を使用している牛舎の中が意外に涼しいと感じたことはありませんか?これは瓦の熱伝導率が低い(熱が伝わりにくい)ことと併せて、波型の形状が熱を外に逃がすためです。
残念ながら多くの酪農場では、規模拡大に伴いこのような瓦屋根が使用されることはなくなり、代わりに安価で施工が容易なスレートやトタンなどが屋根材として使用されています。しかしスレートやトタンは日射吸収率が高く太陽の熱を通しやすいため、屋根裏に熱がこもり易くなってしまいました。
また西日が牛舎内に直接差し込むなど、太陽熱が牛舎内に直接侵入してくることもあります。このような場合は太陽熱が牛舎内に直接に侵入するのを阻むため遮光が必要です。
暑熱対策の第一歩は、「牛舎内に太陽の熱を持ち込まないこと」です。これらは低額の投資で大きな効果が得られる対策であり、暑熱対策としてまず手をつけるべき項目です。
遮光にはいろいろな手段がありますが、もっとも一般的で取り組み易いのは「寒冷紗」と呼ばれる遮光ネットを使用することです。寒冷紗はJAやホームセンターでも安価に購入できます。牛舎の南側・西側に設置することで舎内の温度が大幅に変わってきます。ただし広範囲に設置する場合は換気が悪くなりますので換気システムをよく考える必要が出てきます。
このほか、ヘチマやゴーヤなど蔓性の植物を牛舎周辺に植えてグリーンカーテンを作る方もいらっしゃるようです。この手法では、植物から水分が蒸発する際に気化熱として熱が奪われるため気温が下がることが期待できます。
牛舎の周囲の遮光が終わったら次に取り組むのは屋根の断熱です。投資額が低い順番に実施することで、投資に見合った効果が得られるようにしてください。
屋根を白色に塗装することで屋根の温度を大幅に低下させることができます。もっとも安価な方法は石灰乳を塗布することです。噴霧器を利用すれば効率的に塗布できます(写真1)。サーモグラフィー(写真2・3)を見るとトタンを白色で塗ることで屋根裏の気温が大きく低下することが分かります。
また最近では断熱効果のある塗料が販売されていますが、コストと相談しながら施工してください。

散水も屋根の温度を下げるのに効果があります。スプリンクラーを設置する方法もありますが、ホースに小さな穴をあけて設置することで代用も可能です(写真4)。水圧が足りない場合はホームセンターでポンプなどを購入して設置してください。
写真5と6はトタンに散水した時のサーモグラフィーの画像です。散水により大きく温度が低下しているのが分かります。
ただし大量の水を使用しますので、水道水を使用する場合は水道代がかさみます。また、雨どいのない牛舎では屋根から落ちた水が溜まって、湿度が高くなることがありますので注意してください。

私は夏場に発泡ウレタンを吹き付けた牛舎で作業をしたことがありますが、牛舎内では大変快適に過ごせた記憶があります。このように屋根裏に断熱材を設置することは大きな効果が得られます。ただし、断熱材の設置は費用がかさむのが難点です。代替策として、安価な寒冷紗を屋根裏に針金などで張るだけでも効果がありますのでお試しください。
次回は「換気と送風」について解説したいと思います。 (つづく)
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